2015年4月27日月曜日

「ことば散策」山田俊雄 岩波新書

☆☆☆☆

「でこぼこ」は凹凸か凸凹か? 鴎外の作品中の「華壇」とは何か?-何気なく使われたことばの来歴や用法の探索に心を遊ばせる筆者は,研究生活半世紀を超える国語学者.幼いころ父母から聞いたことば,今では使われなくなったことばを手がかりに,豊富な文献を自在に繰り出して綴られる,日本語への深い思いのにじみ出るエッセイ集。
  内容紹介より



わたしは、もともと、言葉が時代によって移り変わることは世の習い(表現が古い)だと思っていましたし、当然のことだと肯定的に考えていました。しかし、この本を読んでみたら、現代の言葉がなにか騒々しく短絡で乱暴で品性に欠けるのではないかと思った次第です。

特に、著者の文章が、辛辣なところをユーモアで包み、簡潔でありながら品があって、淡々としながらも枯れていないところがとてもいいと思いました。なんだかほめ殺しみたいですが…。やはりプロの言語学者であり、資質のある人の文章だと思います。

例えば、「山高きが故に貴とからず」の項において、
「猫も股いで通る」を「猫股」というなど、諺や格言などを省略、縮約する傾向があるという導入から、
山高きが故に貴(たつ)とからず、樹(き)有るを以て貴としとす
という句が、「山高きが故に貴とからず」に縮約された結果、その意味を、「山のねうちは高さが高いということではない」という平凡な解釈に表して「したり顔をする辞書編集者」に対し、「諺の解説が、どうも原典に親しんだ経験のすくない、いわば日本語にも漢文にも超越的な立場をとる、主観の濃い、しかも通俗の論法で行われるのは、いかがかと思われる」と、シニカルに理路整然としながら、押し付けがましくなく批判しているのです。まさしく、静かに寸鉄人を刺すという印象を受けました。

ことば散策 ことば散策
山田 俊雄 (1999/08)
岩波書店

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