2015年4月27日月曜日

「セミの自然誌 鳴き声に聞く種分化のドラマ」中尾舜一 中公新書

☆☆☆☆

北から南から、日本に飛来して棲息するセミ32種。世界有数の豊富さである。
風土に適応して巧みに棲み分け、短歌、俳句、川柳から絵画、そして夏休みの宿題と古くから親しまれてきた。食用、薬用に利用される反面、害虫としての側面ももち、近年は環境指標として重要な役割を果している。本書は周期ゼミの発生、芭蕉の句のセミをめぐる論争等を紹介しながら、セミの生活史をたどり、鳴き声の意味を探って種分化と進化の謎に迫る。           
カバー内容紹介より



ハルゼミが松林で盛んに鳴く季節になりましたね。なので、セミの本を読んでみました。

長野、山形などで食べられていた(食べられている?)セミの話題、日本各地のセミの形をした凧のこと、セミを詠んだ詩歌、セミの方言名など自然科学以外のことにも言及されているので、日本にいるセミについて色々なことが分かる良書だと思います。

ニイニイゼミの配偶行動の項では、鳴いている雄のもとに雌が飛来し、雄の上方に止まる、「雄は雌の体の下方に位置すると、左前脚(稀に右前脚)で、雌の前翅の翅端部をたたくように触れる。ここで雌の交尾拒否がなければ」(p50)交尾するのですが、雌による交尾拒否がかなり多いようです。鳴き声のほかに、翅をたたくときに分かる雄の脚の長さ、すなわち体の大きさが関係しているのでと推測されるのだそうです。

孵化直後の幼虫は木を伝って地面まで降りていくのかと思っていましたが、地上に落下して土中にもぐるのですね。長時間をかけて降りていくと天敵に捕食される割合が高くなるからでしょうか。
セミヤドリガというセミに寄生して体液を吸う蛾は、他のセミに比べて圧倒的にヒグラシ寄生が多い。同じような環境にいるニイニイゼミに寄生が少ないのは体の部分(前胸背板後縁)の形態の違いによるものではないかという仮説などなど、非常に面白かった。

閑さや岩にしみ入る蝉の声 芭蕉
この句をめぐる斎藤茂吉と小宮豊隆との有名な文学論争や十三年ゼミ、十七年ゼミについての話も興味深いです。

絶版なのが惜しまれます。

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