『黄色い部屋の謎』、『黒衣婦人の香り』などでおなじみのフランス・ミステリ界を代表する巨匠ガストン・ルルーが贈る世にも怪奇な短編集。片腕の老船長が語る奇怪な話「胸像たちの晩餐」、コルシカの復讐譚に材をとった「ビロードの首飾りの女」、結婚相手が次々と怪死を遂げる娘の物語「ノトランプ」をはじめとして、いずれ劣らずなまなましく人間心理の闇を描いて、読む者を戦慄の世界へと誘う。恐怖小説ファン必読の傑作集! 内容紹介より
恐怖小説というより綺談系の話が八編収められた短編集です。
「金の斧」
以前、紹介したフランス・ミステリのアンソロジー『心やさしい女』 にも収録されている作品。無気味さと謎解き、そして読後に深い余韻を与える佳作だと思います。
「胸像たちの晩餐」
ミシェル船長はなぜ片腕を失くしたのか。それは隣家に越してきた旧友が遭遇した貨物船の海難事故の話から始まる。からくも、いかだで脱出した十三人は、一年に一度、旧友の家に集まって晩餐会を催していた。その席に無理矢理参加したミシェル船長が見たものとは…。
幽霊ものかと思っていたら、グロテスクな話でした。
「ビロードの首飾りの女」
首飾りをはずしたら首が落ちてしまうという噂を持つ、ギロチンにかけられながらも首飾りをつけて生きている美女の話。コルシカ島という舞台がそれらしい雰囲気を醸し出している復讐談。ノスタルジックな感じがしました。
「ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス 」
殺されたのに犯人はいない。クリスマスの夜、押し込み強盗に入られて殺された夫婦の矛盾した話。
「ノトランプ」
美しい娘と十二人の求婚者。一番から十二番までプロポーズの順番を振られた彼らは彼女と結婚すると次々に死んでしまう。四番目の男は自分の番になった時、五番目の男に順番を譲ったが。設定が秀逸。
「恐怖の館」
新婚旅行でスイスに行った夫婦が、悪天候のため宿泊するはめになった辺鄙な宿屋は、以前、旅人を殺し金品を奪っていた事件で有名になった館で、客寄せのために当時の状況を再現していた。この話は現実にありそうで怖いです。
「火の文字」
金持になるため悪魔と契約を結んだ落ちぶれたばくち打ちの話。もうひとつな感じ。
「蝋人形館」
決して恐がりではないという若者が、ひと晩を蝋人形館で過ごすという賭けを友人と交わした結末。展開が読めて、まあ、ありきたりか。
超自然現象と読者に思わせながら実は結構論理的で人間臭い結末の話が多いです。そこはスリラー作家ではなく、あくまでもミステリ作家ルルーの面目躍如といったところでしょうか。わたしのような恐がりでも平気なノスタルジックの香りがする短編集です。
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この本は、僕もお気に入りの一冊です。
たしかに超自然の話かと思ってたら、ほとんど(全部かな?)合理的に解決される話でしたね。いわゆる「グラン・ギニョール」風作品集といっていいんでしょうか、残酷なショッカーという感じの短編集でした。
フランス・ミステリを紹介した『怪盗対名探偵』(晶文社)を読んだ感じでは、ルルーは本格推理の作家というよりは、扇情的なスリラー作家といった方がいいような印象を受けました。『オペラ座の怪人』はその線に沿った作品でしたしね。まだ未訳で面白そうな怪奇スリラーがいくつもありそうなので、ぜひ訳してもらいたいものです。
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kazuouさんのコメントはいつも勉強になります。ありがとうございます。ルルーの作品は今の時代に受けそうですね。しかし、フランス・ミステリというジャンルは、日本では敬遠気味で残念です。