2015年4月27日月曜日

「アマポーラスの週末」ハリエット・ドウア 集英社

☆☆☆☆

灼熱の陽光に晒された大地、突然の驟雨。メキシコの小さな村アマポーラス。湖のほとりのその村を見おろす、大農園主の館の土地が売りに出されたことから物語が始まる。
離婚の傷を癒すためこの土地を訪れた女流画家スーは、ケシ(アマポーラス)の花が咲くこの高台が気に入り、偶然同時期にやって来た同じアメリカ人の男と共同で土地を購入、区画に分け分譲地として売りに出す。この辺境に土地はポツポツと売れ、やがて異邦人の小さなコロニーが生まれる。スーと男、老音楽家、30代のアメリカ女と79歳の母親。行きづまった事業をやり直すため、幸福を求めて漂流した果て、そして自分の終の住処を求めて……。老女は時の流れを慈しむように数年間この土地で暮らし、静かに逝く。そしてスーも愛を再生する……。 帯内容紹介より



73歳でデビュー作『イバーラの石』を書いて全米図書賞新人賞を受賞した作者が、十年後に出した第二作目だそうです。『イバーラの石』は未読ですが、この作品はなかなか良いです。作者自身がメキシコに長期間暮らしたことがあるそうで、その体験が骨子になっているのでしょう。主人公たちの異郷の地に住む外国人としての立場が、ピーター・メイルの一連のプロヴァンスものを彷佛させます。年齢を重ねた者にしか出せないような淡々として無駄を排すというか、端的な文章による描写はメイ・サートンを感じさせられました。しかし、決して枯れているのではなくて、83歳の作品とは思えないほど、風景描写は色彩的、絵画的なのです。

作者は、夫を亡くして娘の近くに家を建てたアーサラ・ボウルズに自身を投影しているみたいで、とても印象深く魅力的な女性に描かれています。「生」に比べて、たくさんの「死」が語られるのに、センチメンタルなストーリーへと流されないのは、カトリック教的運命論者らしい村人たちのあっけらかんとした言動がユーモラスな感じを与えているからでしょうか…。できればもっと長い作品にして欲しかったです。


アマポーラスの週末 アマポーラスの週末
ハリエット ドウア (1997/09)
集英社

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