女ともだちの養父の自殺現場に残された一通の青い手紙。その謎の手紙は90年前、ニューヨークで投函されたものだった。僕、サイモン・モーリーはニューヨーク暮らしにすこしうんざりしはじめていた。そんなある昼下がり、政府の秘密プロジェクトの一員だと名のる男が、ぼくを訪ねてきた。プロジェクトの目論みは、選ばれた現代人を、「過去」のある時代に送りこむことであり、ぼくがその候補にあげられているというのだ。ぼくは青い手紙に秘められた謎を解きたくて「過去」へ旅立つ。
鬼才ジャック・フィニイが描く幻の名作。上巻裏表紙あらすじより
わたしは、短編集『ゲイルズバーグの春を愛す』は内容もですが、この邦題も好きです。
そんなフィニイの得意とするタイムトラベルものです。彼の「過去」のとらえ方はかなりユニークですね。それは、やがて遠く流れ去ってしまうものではなく、薄い皮膜が徐々に層を成していくようなものなのかもしれません。何億年前の化石でさえ、時間と自然現象という偶然の力によって現代に姿を現し、中生代が現代のすぐ隣に出現したかのように過去と現在が近接した感覚を覚えるような。フィニイのこの小説では、タイムマシンなど使わずに1882年の時を求めさえすれば(ただ、個人の能力や資質が必要ですが)、すぐそこにそれが現れ、現代と行き来できるという設定です。フィニイがあえてタイムマシンを使用せず精神・心によるタイムトラベルを選んだのは、行き過ぎた機械文明に毒されていない、まだ、人間らしさが残っている時代を描くためには、まず機械(マシン)を否定する必要があったからではないでしょうか。
前半、やや進展が遅いのですが徐々に面白くなります。挿絵、写真も豊富ですが、ニューヨークの街並をご存じの方はより楽しめそうです。
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フィニィの「過去への郷愁」が凝縮されたかのような作品ですね。
「精神的なタイムトラベル」というのが、フィニィの発案になるのかどうかは、寡聞にして知りませんが、機械を使わないやり方はフィニィにふさわしいですね。テクノロジー嫌いのあのブラッドベリでさえ、タイムマシンは嬉々としてして使っていますしね(まあブラッドベリの場合は、タイムマシンも一種のガジェットというか「おもちゃ」みたいなものですが)。
あと、てん一さんの言われる通り、ニューヨークやアメリカを知っている人は楽しめるかもしれません。僕は、ちょっとその辺がつらい感じでした。
ただフィニィのノスタルジーのエネルギーがすごいので、最後まで読ませてしまうのは、さすがです。
ちなみに続編は、そのエネルギーも大部おちていて、かなり退屈なものになっていたように思います。
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フィニイの作品の発想は、特異というか独特なものがあると思いますが、その情念あるいは「エネルギー」はすごいですね。しかし、どうも続編は低評価みたいですね(笑)。
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とても不思議なタイムトラベルですね。
しんどいなと思いながら、最後まで読みました。
“薄い皮膜が徐々に層を成していくようなものなのかもしれません。”
いい表現ですね。過去はそういう風にも考えられるのだと思えました。
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honyomiさん、コメントありがとうございます。たしかに読んでいて、のめり込むほどの面白さは感じませんよね。それでも、フィニイの過去にたいする思い入れが読者に、最後まで読ませてしまうのかもしれません。